主な性感染症一覧

梅毒尖圭コンジローマB型肝炎
淋菌感染症腟トリコモナス症C型肝炎
性器クラミジア感染症ケジラミ症後天性免疫不全症候群(エイズ)
性器ヘルペス性器カンジダ症 
メ モ:
  1. 性感染症は複数の感染を被ることがある。 またそのような時には、エイズのように免疫が低下する疾患に罹患しているかどうか念のためチェックする必要がある。
  2. 性感染症を思わせる症状があった時は、速やかに検査を行うことが望ましい。しかし、無症状のことも多いため、性感染症に罹患した可能性を考えた場合には症状の有無にかかわらず受診・検査を受けるようにした方が良い。ただし、HIV感染のように潜伏期間が長く、検査結果が陽性に出にくい時期のあるものもあり、検査結果が陰性であっても一定時間をおいて再検査を行った方が良い場合もある。
  3. 治療が中途半端になると再発を繰り返したり、悪化したりすることがあるので、自己判断で治療を中断したりしないようにする。
  4. 本人の検査結果が陽性の場合、できるだけパートナーの検査を行い、必要であればともに治療を行う。

各疾患の説明

梅毒

病原体
梅毒トレポネーマ
感染経路
性的接触を介する皮膚や粘膜の病変との直接接触
潜伏期
約3週間
症 状
感染した部位(性器、口など)に赤色の堅いしこりやただれができ、近くのリンパ節が腫れる(第1期)。
その後3~12週間くらいの間に、発熱、全身倦怠など全身症状とともに、皮膚に様々なタイプの発疹が現れ(第2期)、さらに10~30年の間に心臓や血管、脳が冒される(第3、4期)。
診 断
病変部から病原体を確認(顕微鏡観察)、あるいは血液による抗体検査
治 療
抗菌薬(主としてペニシリン系)
放置
すると
第1期から2期、3・4期へと徐々に進展する。精神神経異常、死に至ることもある。
母体の感染により、出生児が先天梅毒になることがある。

淋菌感染症

病原体
淋菌
感染経路
性的接触を介する粘膜との直接接触
潜伏期
2~7日
症 状
男性では排尿時痛と濃尿、女性ではおりものや不正出血あるいは症状が軽く気づかないことも多い。
咽頭や直腸の感染もあるが、自覚症状がなく気づきにくい。
診 断
性器、尿道からの分泌物や口腔などから病原体分離培養、あるいは核酸検査(PCR)
治 療
各種の抗菌薬に対して耐性率が高くなっているが、有効な抗菌薬もある
放置
すると
不妊の原因になることがある。感染した母体より出産した新生児が淋菌性結膜炎になることがある。

性器クラミジア感染症

病原体
クラミジアトラコマティス
感染経路
性的接触を介する粘膜との直接接触
潜伏期
1~3週間
症 状
男性では排尿時痛や尿道掻痒感、女性では症状が軽く無症状のことも多い
診 断
性器、尿道からの分泌物や尿、口腔内から抗原検出や核酸検査(PCR)
治 療
抗菌薬(マクロライド系、ニューキノロン系が中心)
放置
すると

不妊、流産・死産の原因になることがある。

性器ヘルペス

病原体
ヘルペスウイルス
感染経路
性的接触を介する皮膚・粘膜の病変との直接接触
潜伏期
2~10日
症 状
性器の掻痒、不快感ののち、水泡、びらん
診 断
病変部からウイルス分離、抗原検出や核酸検査(PCR)
治 療
抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)
放置
すると
痛くて放置できるものではないが、放置しても2~4週間で自然に治る。
ただし再発を繰り返すことが多い。

尖圭コンジローマ

病原体
ヒトパピローマウイルス(6型、11型が多い) 注: 子宮頸がんは16型、18型感染が多い
感染経路
性的接触を介する皮膚や粘膜の病変との直接接触
潜伏期
3週間~8ヶ月
症 状
性器・肛門周囲などに鶏冠様の腫瘤
診 断
病変部の形態の観察、病原体の核酸検査(PCR)
治 療
切除、レーザー、クリーム(イミキモドクリーム)など
放置
すると

20~30%は3ヶ月以内に自然治癒、悪性転化あり

腟トリコモナス症

病原体
腟トリコモナス原虫
感染経路
尿道や性器からの分泌物との接触
(性的接触のほかに、下着・タオルなどを介しての感染)
潜伏期
不定
症 状
男性は自覚症状のないことが多い
女性は自覚症状に乏しいが、おりものの増加、外陰・腟の刺激感やかゆみ
診 断
性器・尿道からの病原体検出、病変部の顕微鏡観察
治 療
メトロニダゾール
放置
すると

再発・再燃する。放置しても治ることはない

ケジラミ症

病原体
ケジラミ
感染経路
性的接触を介する陰股部、陰毛との直接接触
衣類・寝具などを介する間接的感染もある
潜伏期
不定(1~2ヶ月が多い)
症 状
寄生部位(主に陰股部)の掻痒
診 断
皮膚・陰部・毛髪などの虫体や卵の確認
治 療
剃毛、フェノトリンパウダーあるいはシャンプー
放置
すると

症状の継続あるいは悪化。放置しても治ることはない

性器カンジダ症

病原体
カンジダ属の真菌
感染経路
性的接触を介して伝播しうるが、必ずしも発症しない
潜伏期
不定
症 状
男性では症状を呈することは少ない。女性では外陰部の掻痒とおりものの増加。
カンジダを保有しているのみの場合もある。
診 断
顕微鏡観察等による病変部からの胞子や仮性菌糸の検出。病原体の培養。
治 療
抗真菌剤の腟錠や軟膏・クリーム、経口薬
放置
すると

症状の継続、再発、再燃。放置しても治ることはない

B型肝炎

病原体
B型肝炎ウイルス
感染経路
血液や体液との直接接触
潜伏期
約3ヶ月
症 状
発熱や全身倦怠のあと、黄疸(1~2%で劇症肝炎)。無症候の場合もある
診 断
血液中の抗原、抗体の検出、病原体の核酸検査(PCR)
治 療
予防にはワクチンが有効。抗ウイルス薬・インターフェロンなどが用いられる場合もある
放置
すると

キャリア化して、慢性肝炎、肝硬変、さらに肝癌へと進展することがある

C型肝炎

病原体
C型肝炎ウイルス
感染経路
血液や体液との直接接触
潜伏期
2週間~6ヶ月
症 状
全身倦怠感、食欲不振、黄疸などが見られるが、症状は軽い
診 断
血液中の抗原、抗体の検出、病原体の核酸検査(PCR)
治 療
抗ウイルス薬とインターフェロン
放置
すると

多くがキャリア化して、慢性肝炎、肝硬変、さらに肝癌へと進展することがある

後天性免疫不全症候群(エイズ)

病原体
エイズウイルス
感染経路
血液や体液との直接接触
潜伏期
平均10年程度
症 状
感染成立の2~3週間後に発熱、頭痛などのかぜ様症状が数日から10週間程度続き、その後数年~10年間ほどの無症候期に入る。放置すると、免疫不全が進行し種々の日和見感染症や悪性リンパ腫などを発症する
診 断
血液中の抗体、抗原、遺伝子の検出、病原体の核酸検査(PCR)
治 療
抗HIV薬
放置
すると

慢性的に進行し、死に至るが、近年治療による改善・延命が進んできている