1若者の性行動の実態
性交経験率
「青少年の性行動-わが国の中学生・高校生・大学生に関する第7回調査報告-」(日本性教育協会)によれば、前回調査の2006年に比べ2011年の大学生、高校生の性交経験率は大幅に低下しました。
特に 大学女子(61.1%→46.8%)と高校男子(26.6%→15%)の低下が顕著です(右図参照)。
性交開始の低年齢化が言われて久しいですが、その傾向に歯止めがかかったように見えます。
人工妊娠中絶率
衛生行政報告例によれば、2011年の人工妊娠中絶実施率(女子人口千対)は前年比約5%減少しましたが、「20歳未満」の年齢階級においては増加しました。
その「20歳未満」について各歳別にみると高校生年齢である「16歳」、「17歳」、「18歳」で増加していることに留意する必要があります(右図参照)。
コンドーム
コンドームは避妊だけでなく性感染症の予防にも有効であり、性行動が活発な若者への使用と正しい使い方の普及開発は重要です。
近年、コンドームの国内出荷数は減少の一途をたどっていましたが、少子高齢化社会の到来や景気の停滞にもかかわらず2010年に増加に転じています。(右図参照)
2高校生の妊娠と避妊
昨今の調査で、高校生の性交経験率は3年生で約50%に近いとの報告があります。しかし性交に伴うリスクを確実に回避できる知識を持つものは多くはありません。性交後に妊娠が判明して人工妊娠中絶をする場合や、なかには中絶の時期を失して仕方なく出産している例もあります。
高校生が妊娠した場合、出産するか中絶するかの選択へのカウンセリングは重要です。齋藤(※)らの調査で、妊娠した子どもたちの相談相手は専ら友人やパートナーであることが多く、未熟な者同士で悩みを相談し合っている現状があります。何も知らないまま妊娠してしまい、中絶するにしても出産するにしても大きな負担や傷ついてしまうのは女子であり、これらを少しでも減少させるために、高校生までに科学的な性知識を持つように家庭や学校で教育していくべきです。そして、もしかして妊娠したのではと思い悩むとき、身近にいる大人が相談相手になり支援できるように、保護者や教諭は避妊に関する知識を持つ必要があります。
高校生が出産することに対する問題
高校生の出産には以下の問題があります。
(1) パートナーがいない場合やいても年齢が若く職業についていないことが多い
(2) 経済的に不安定である
(3) 母親自身が未だ成長過程にある
(4) 学業が継続困難になる
(5) 妊娠や出産育児に関する知識がなく、母親としての自覚に乏しい
人工妊娠中絶とその影響
(1) 人口妊娠中絶の定義と適応
定 義 |
適 応 (母体保護法第14条) |
(2) 人口妊娠中絶の方法
妊娠12週未満までを初期中絶といいます。妊娠初期は胎盤が未だ形成されておらず流産し易い時期でもあります。初期中絶の場合は内容物も少ないので中絶術も比較的容易で処置の時間も短く、出血も少ない場合が多く、母体への浸襲も少なく身体的負担も軽い時期であり、中絶を決定する場合はなるべくこの時期に間に合うように指導することが望ましいです。
妊娠12週から22週未満の中絶を中期中絶といい、この時期になると胎児も発育増大し、胎盤も形成されて妊娠の安定期に入っています。妊娠の最も安定している時期に人工的に流産をさせるので処置に手間がかかり入院日数が延長して身体的にも精神的にも経済的にも大きな負担になります。
(3) 中絶が女性の心身に及ぼす影響
人工妊娠中絶の身体的影響には直接障害と後遺症があります。直接障害には子宮頸部や体部の損傷、出血、感染、内容物の遺残、麻酔による障害などがあり、後遺症としては習慣流産、子宮外妊娠、前置胎盤、不妊症などの妊娠障害や分娩時には癒着胎盤になり出血が多くなること、不正出血、月経異常などが起こることもあります。わが国の産科医療技術は高度であり、これらの身体的障害は少ないのが現状です。しかし精神・心理的影響は大きく、中絶に対する罪悪感、胎児に対する憐憫、次回妊娠への恐怖、性交への不安、男性に対する不信感、うつ状態、不眠などを訴えることがあります。これらの精神・心理的影響は女性の心に深い傷を残すことがあり、中絶後のカウンセリングは重要です。
3避妊法
望まない妊娠を予防するために確実な避妊が必要です。思春期は、心身の発達に伴い性衝動が強くなる時期ですが、この時期は本人が未だ成長過程にあり、子どもを生み育てるには精神心理的・社会的にも未熟で、しかも経済的に自立していません。確実な避妊と性感染症の予防について正しく理解させることが大切です。
若者に適した避妊法
思春期では月経が不規則であったり、無排卵のことがあって性周期が確立していないため、予定月経を正式に把握したり、排卵日を推定することが困難な時期で、基礎体温法やオギノ式では失敗して妊娠することがあります。パートナーとの関係性も婚姻という形をとっていない場合が殆どなので、確実な避妊法が求められます。その意味では経口避妊薬や確実なコンドームの使用が適しているといえます。
経口避妊薬は、平成9年に発売されたが、世界では既に40年以上も使用されています。わが国の使用率は3%程度で諸外国に比べて著しく低率です。低用量ピルはホルモン量も少なく避妊効果は優れており、月経困難症などがある場合の副作用も期待できます。性行動が活発で性交回数の多い若者には有効で確実な避妊法です。
高校生の避妊行動として性交中絶法が多く行われていますが、これは失敗率が高く真の避妊法とはいえないことを伝え、男性用コンドームはわが国では最も多く使用されている避妊法で、高校生の避妊法としてこの方法が多く用いられており、コンドームの破損や途中の脱落など失敗の原因を回避して確実に使用するように説明します。
各種避妊法の利点・欠点
男性用 コンドーム |
避妊機序 使用方法と管理 利 点 欠 点 |
---|
子宮内 避妊器具法 (IUD) |
避妊機序 使用方法と管理 利 点 欠 点 |
---|
経口避妊薬 (低用量ピル) |
避妊機序 使用方法と管理 利 点 欠 点 |
---|
緊急避妊法 |
避妊機序 使用方法と管理 利 点 欠 点 |
---|