教職の方へ 教育機関に携わる方

日々の学校生活の中で行う、性の健康教育と性感染症予防啓発

思春期の性行動の活発化は、望まない妊娠や性感染症の罹患に繋がっています。
学校保健関係者は子ども達が性行動を開始する前に、これらの性交に伴う2つの問題について、分かり易く性教育を進めていく必要があります。性教育は子どもの成長に併せて具体的で分かり易く、また大切なメッセージとして伝えて欲しいものです。

性交の開始の前にはかけがえのない生命の素晴らしさ、自分も相手も大切にできる異性との付き合い方、そのためには人間が成長する過程で出会うパートナーの大切さ、そして、性の三側面としての快楽性・連帯性・生殖性の意義、性交を経験する時期になったら、性感染症の症状や予防法、避妊法の実際などについての知識の提供も必要です。

そして、高校卒業までにはコンドームの正しい使用法を知らせたいものです。学習指導要綱に添って段階的に生徒の健康管理の一貫として行っていくことが大切です。

学生・生徒の性の健康に向き合う ~支援のポイント

1男女の二次性徴、身体的変化・精神的変化・性意識などの男女差

男女の二次性徴の特徴や身体の変化について、生徒が成長していく自分を好きになれるように、それぞれの特徴について説明します。特にこの時期は異性に関心が高まってくる時期なので、異性に対する気持ちは正常な変化であることを知らせ、自己肯定感が高まるように支援します。

2月経と射精 その管理

女子には月経の記録をつけることを習慣付けることも大切です。この時期は不規則であり、月経困難症などの訴えもあるので、月経時の過ごし方、月経困難症への対処法として、暖めることや、骨盤低の運動などを薦めます。

3異性との交際の仕方

この時期は異性に接近したい気持ちや、触れ合いたい気持ちが出てくる時期です。それは正常な発達であることを理解させることが大切です。異性との交際は、お友達として相手を尊重し、大切にすることが最も大事ですが、性的接触はお互いに納得できるような大切な関係性が築けてからにするように支援しましょう。音楽会や映画、スポーツなどを共に楽しめるような時間を作るようにアドバイスすることも必要です。

4性交に伴う問題

性交に伴う問題は、望まない妊娠と性感染症の罹患です。妊娠に気づかないままに出産した高校生もいますので、月経の管理は大切です。性感染症は症状がないことが多く、感染に気づかず他人に感染させてしまいます。性交を開始する前に、これらへの対処能力を身につけさせましょう。

5避妊と人工妊娠中絶

思春期までは性的接触は基本的にはしないほうがよいのですが、そのような関係になったとしたら、確実に避妊をすることが大切です。この時期に適した避妊法の一つに、コンドーム法があります。また、避妊に失敗した結果、人工妊娠中絶を選択することになります。中絶に対する教育は脅しにならないように、また中絶した後の心のケアにも注意したいものです。

よくあるQ&A

Q1生理中はうつりやすいですか?

A1妊娠のおそれから生理中にセックスをする人がいますが、生理中のセックスは避けるべきです。女性が感染している場合、生理中にセックスする相手は、エイズ、B型肝炎等の血液を介して感染する病気にかかりやすくなります。また、生理中は子宮内膜に損傷があるため、女性もエイズ、B型肝炎等にかかりやすくなる可能性があります。

Q2コンドームを正しく使えば性感染症は予防できますか?

A2コンドームは感染の可能性を完全にゼロにすることはできませんが、使わない場合に比べて、性感染症に感染する可能性を大いに下げることができます。
まず、コンドームは、男性の尿道分泌物またはそれを含む精液と女性の子宮頸管との接触を防止し、それに女性の頸管分泌物と男性の尿道との接触で感染する淋菌、クラミジアを通過させません。また、感染部位が主として性器に存在する梅毒、ヘルペス、尖圭コンジローマ、それに血液中に存在するウイルスが血液から血液への伝染するHIV、B型肝炎(HBV)では、性器が出血点となるので、それらの接触をカバーするコンドームは、腟性交、口腔性交、肛門性交での感染予防にきわめて有効です。

Q3HPVワクチンを打つと不妊症になると聞いたのですが、本当ですか?

A3HPVのワクチンが出たときにそのような風評が出回り、医療機関で質問されることもあります。不妊症の原因は様々なものがありますが、HPVワクチンを接種すると不妊症になることはありません。そのような調査結果などは示されていないからです。根拠のないことで悩むよりも不妊症の原因といわれている性感染症の予防や人工妊娠中絶をしないようにして、妊娠の可能性を高める生活の工夫などに気をつけたいものです。

Q4中学3年生のA子がクラスの男子と交際しており、性交を経験したことがクラス内に広がってしまいました。性交は簡単なものという雰囲気になり、困っています。どの様に対処したらいいですか。

A4まず、正しい性知識の提供をすることです。性交に伴う妊娠・中絶の話、性感染症の話をすることも大切ですが、性交の意味について考えさせる時間をつくる必要があります。
子どもと真摯に向き合い、性の意味・愛の意味について自分たちで考えさせる時間を作ってみましょう。

Q52年生の女子ですが、月経になると頭痛と腹痛がつよく、売薬の頓服を服用していますが、毎月1-2日は授業を休んでいます。病院の受診を勧めた方がいいですか。

A5授業を休むほど酷いようであれば、一度婦人科の受診を勧めてください。病院と連携して、簡単に内診をされない様に話すのもいいと思います。今日では、月経困難症によいくすりがありますので、一度試してみるのも良いとおもいます。

各種養成制度・開催講座・配布資料等のご案内

当財団では、医療機関に携わる看護職の皆様に向けて、以下のような養成制度や講座を設けています。
その他詳しくは、事業案内 のコンテンツ内にてご覧ください。

医療職(臨床医)向け各種医療職向け教職向け

臨床現場を対象とし、性感染症をはじめとする感染症の検査・診断・治療とその予防方策について最新の知見等を提供する専門的な講習を目的としています。
本年度は、医師講座と性の健康基礎講座をあわせて実施することとなりました。
※日本性感染症学会教育研修単位の講座です。

テーマ 『感染症と差別・偏見』
第15回 : 2024年3月17日(日)
詳しくはこちら

性の健康カウンセラー 養成制度
各種医療職向け教職向け

人間にとって性とは何か、さらに将来を見据えた性の健康とは何かを探り、即戦力となる性の健康に関する不安や悩みの相談に特化したアドバイザーを養成しスキルアップを図ることを目的としています。
性の歴史をひもとき、大きく変わりつつあるわが国の性の現状と対応を学ぶことから始めます。

2023年度は、これまでの性の健康カウンセラーコースの内容を吟味して、一部を対面開催とし、残りの多くを受講生の都合に合わせて視聴できるように、オンデマンド開催といたします。基礎コース応用コース共に受講して頂き、全ての受講を終えた後に「性の健康カウンセラー」として認定いたします。

対面での開催
・基礎コース 1月28日(日曜日) ZOOM
・応用コース 2月18日(日曜日) カウンセリングの実際 他
       3月10日(日曜日) 認定試験・修了式を含む
対面講義会場:東京大学泌尿器科医局(CRC棟 3F 北)

オンデマンド視聴
・基礎コース 期間:1月10日~2月10日
・応用コース 期間:2月10日~3月7日
・すべて終了しましたら、認定証を授与致します。 詳しくはこちら

中高生・保護者向け
出前講座

あるちょっとしたきっかけから始まった 「性感染症出前講座」。
当財団では、ご要望のあった学校(高等学校など)に直接出向き、生徒さんや保護者向けに、無料で性感染症予防講座を開催しています。

「あちらもまなび、こちらもまなぶ」
生徒さん達に直接語りかけながら、現代の若者の性感染症予防に対する意識やニーズを読み取り、今後の財団活動にフィードバックするための活動でもあります。

性の健康と相談のためのガイドブック

性の健康に関する啓発活動に従事する保健医療従事者、学校保健関係者、必携!

性に関する考え方や性感染症、避妊、人工妊娠中絶などの基本的な知識を、事例やQ&Aを盛り込んでわかりやすく解説しています。
性の悩み相談に活かせる知識が満載。 「性の健康」を支援するすべての人が、幅広い視野をもち、相談者として自信をもって対応することができる実践書です。

編集 (公財)性の健康医学財団 / 編集代表 齋藤益子  2014年4月10日発行
B5判198ページ  定価 2,860円 (本体2,600円+税10%)
発行所 中央法規出版株式会社
詳しくはこちら

臨床医・研究医向け各種医療職向け
性の健康に関する調査研究の助成

性感染症をはじめ、性の健康を損なう諸要因を医学的、社会学的、心理学的等の学際領域から究明し、性に関する医学技術の発展を図るための調査研究および助成です。
公募していますので、ご希望の方は随時ご相談ください。

女性性器からのHPV自己採取検体郵送検査による全国調査
子宮頸がんの早期発見、早期治療に役立ちます。詳しくはこちら
先着500名様を対象といたします。

性の健康活動資金助成事業
性感染症の認知、啓発活動および性の健康を増進することに
関しての活動を推進するための活動資金です。詳しくはこちら
平成29年度 応募期間: 9月8日~10月10日
※応募期間延長 2018年1月4日(必着)まで ※終了

臨床医・研究医向け各種医療職向け
性の健康医学財団賞

性感染症および性の健康に関して、科学的研究の発展を図るために
性感染症および性の健康に関して、その成因、病態、診断、治療、予防・啓発等の科学的研究の発展を図るため、当財団の創立90周年を記念して設けられた賞です。
※泌尿器科分野・産婦人科分野・性の健康分野の3分野
※自薦・他薦は問いません

本年度 応募ならびに推薦期間 : 令和5年8月21日(月)(必着) 詳しくはこちら

各種医療職向け教職向け

日常業務に役立つ、性感染症の予防をはじめとする性の健康についての知識を習得していただく講座です。
本年度は、医師講座と性の健康基礎講座をあわせて実施することとなりました。
※日本性感染症学会教育研修単位の講座です。

テーマ 『HIVと性感染症-予防と治療の最新情報』
第13回 : 2022年3月6日(日) ※終了 詳しくはこちら

性の健康について、さらに詳しく知りたい方へ

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは、「性的接触によって感染する病気」 と定義されます。 普通の性器の接触による性交だけではなくオーラルセックスやアナルセックスなど性的な接触で感染するすべてが含まれます。したがって特殊な状況での感染もありますが、通常の人としての営みの中で誰もが感染する病気であり、誰にでも生じる健康問題であるといえます。

以下コンテンツでは、代表的な性感染症を体系的に情報提供します。また、平成30年1月18日改正の「性感染症に関する特定感染症予防指針」において特に指摘されている若年層における性感染症発生の割合が高いことや、梅毒報告数の増加等の情報を提供しています。
ぜひ日常業務の中で、地域住民の方々に対する性感染症の予防啓発にお役立ていただければ嬉しく思います。

性の健康について

性の健康について

「性の健康」とは、単に疾病がない状態を意味するに留まりません。性の喜びや満足は幸福にとって不可欠な要素です。

性の健康世界学会(World Association for Sexual Health :WAS)で採択された 「性の健康と性の権利宣言」 を紹介し、これらを踏まえながら、各機関の専門職の方々におさえていただきたい、具体的な支援のポイントをお伝えいたします。

性感染症とは
~予防啓発に役立つ情報 (もくじ)

1. 性感染症とは

  • ● 感染症法の中で規定されているもの
  • ● 特定予防指針で示されているもの
  • ● 学会ガイドラインであげているもの

2. 主な性感染症一覧

  • ● 梅毒
  • ● 淋菌感染症
  • ● 性器クラミジア感染症
  • ● 性器ヘルペス
  • ● 尖圭コンジローマ
  • ● 腟トリコモナス症
  • ● ケジラミ症
  • ● 性器カンジダ症
  • ● B型肝炎
  • ● C型肝炎
  • ● 後天性免疫不全症候群(エイズ)

3. 性感染症の現状

  • ● 疾患別報告数(定点・2020年)
  • ● 定点あたり年次推移(2000~2020年)
  • ● 定点あたり年齢階級別(2020年)
  • ● 梅毒の動向(梅毒が増えています)

4. 性感染症の検査・治療

  • ● 保健所に行く
  • ● 病院・クリニックに行く
  • ● 検査と診察の実際

5. 若者の性行動の実態と避妊

  • ● 若者の性行動の実態
  • ● 高校生の妊娠と避妊
  • ● 避妊法