当財団の歴史 (5/10) 日本性病予防協会 機関誌『體性』

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日本性病予防協会 機関誌『 體性 』

土肥慶藏は、1921(大正10)年12月1日に財団法人日本性病予防協会の機関誌『體性』 を創刊し主筆となった。この雑誌は非常にユニークな雑誌で、当時に於いても今日でもほとんど例を見ないものである。
即ち、医師やコメディカルばかりでなく、一般の市井人にも購読会員として入会や投稿の門戸が開かれていた。内容は学術的なものから産児制限論、下世話な恋物語、伝説、奇聞なんでもありの斬新な内容であった。芥川龍之介も書き下ろしの短編小説 『三つの指輪 お伽噺』 を寄稿している。土肥慶藏の顔の広さを物語る陣容である。

1922(大正11)年6月15日発行、第2巻 第5号の巻末には、入会広告がある。
「日本性病予防協会 入会自由。本会の主旨を賛成の各位は、葉書で本会へお申込みあれば、誰でも会員になれます。そして機関雑誌『體性』の配布を受けます。会費は雑誌代共一ヶ年三円です。」

1921(大正10)年12月1日発行 の 『體性』 創刊号の表紙である(図4)。
彼の好きなミケランジェロ作のダビデ像が載っている。『體性』 の文字を真っ赤にしてタイトルを際立たせている。実はドイツ留学中の彼の部屋にもダビデの像の写真が掲げられていたという。多分、彼のお好みであったのだろう。その後、毎月、彫刻または絵画の像が表紙を飾った。

『體性』 第1巻 第1号 第1頁 の創刊の辞は勿論、主筆の土肥慶藏が書いている。

 抑も本病は人類の弱点に乗じ、社会の各層間に浸淫するが故に、之が予防と制遏とは、尋常一様の努力を以ってするも能わざるべく、上下力を協せ国民一致の自覚に依るに非ざれば到底其成果を観るを得ざるべきなり。
 茲に本誌を発行して、社会各級の人士をして本病に関する理解を得せしめ、且つ医師に対して日新の療法を紹介すると同時に、性的生理学 Sexualbiologie、性的社会学 Sexualsociologie の両方面より広く男女の體性を研究して健全なる国家の確立と、社会人類の繁栄とに資する所あらんことを庶幾す。
 然れども、菲才固より斯くの如き重任に堪えざるを知る。庶幾ば江湖各位の同情と、同憂諸君の後援とにより、本事業の前途に光明を與え所期の目的を達成せしめられんことを。

『體性』 創刊号 目次 を以下に掲げる。

◇ 創刊の辞
土肥慶藏
◇ 医師諸君に対する希望
大澤謙二
◇ 娼妓の検梅は寧ろ廃止すべし
島田三郎
◇ 性的理想主義
帆足理一郎
◇ 性病による精神異常論
三宅鑛一
◇ 人間や動物の体を接合する研究
 
◇ 性病予防問題に就いて
潮恵之輔
◇ 親子と夫婦は何れが先か
石川千代松
◇ 人性の脅威
永井潜
◇ 梅毒と米国の結婚禁止令
杉田直樹
◇ 日本売笑史考
上林豊明
◇ スタイナッハ氏若返り法批判
加藤泰
◇ 我国に於ける娼妓検梅の始祖
石黒忠悳
◇ 體性から観た子孫の運命
賀川哲夫
◇ 絵本梅瘡軍談
船越錦海
◇ 海外に於ける性病問題
 
◇ 文藻
 
◇ 財団法人性病予防協会会報
 

雑誌 『體性』 投稿規定
投稿歓迎 毎月1回1日発行  一部 金40銭

性の問題は個人問題であり、国家問題であり、同時に全人類の問題です。従って本誌も広く愛読者諸兄の厳正なる批判と、忠実なる研究とに関する投稿を歓迎します。
御投稿下さる要領は次の諸項に限りたいのです。
 1) 医家より見たる性及び性病
 2) 性についての奇談逸話
 3) 性病予防について
 4) 伝説と神話
 5) 質疑応答欄

財団法人日本性病予防協会への寄付者芳名録
1922(大正11)年10月

金 五千円 岩崎男爵    金 五千円 三井同族会
金 七百円 土肥慶藏
金 三百円 笹川三男三   金 三百円 岡村龍彦
金 壱百円 栗本庸勝    金 壱百円 中野等
金 壱百円 櫻根孝之進   金 壱百円 北島多一
金 壱百円 坂口勇

三井、三菱の財閥から各5,000円、土肥慶藏自身も700円も寄付している。助教授の中野等も100円寄付しており、その他、泌尿器科医、皮膚科医の名士が多額の寄付をしている。

(図4)體性 創刊号表紙 ダビデ像
(図4)
體性 創刊号表紙 ダビデ像
1921(大正10)年12月1日発行
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