性感染症とは (性感染症の種類)

はじめに
昨今の性感染症を取り巻く状況の変化を踏まえ、平成30年1月に「性感染症に関する特定感染症予防指針」が改正されました。当財団におきましても、この改正の趣旨や指針の内容を踏まえて今後の予防活動を推進してまいります。

このコンテンツでは、今回の指針改正のポイントである、若年層における発生の割合が高いことや梅毒報告数の増加等を意識し、情報提供します。思春期の健康が、生涯の健康、さらには次世代の健康の礎となるのは自明の理であり、若者が自分自身の身体を正しく知り、お互いの性を理解しあうこと、性行為をすれば性感染症の感染リスクや妊娠する可能性があり予防のための正しい知識を身に付けて行動すること等々の啓発・教育は、健康の維持・促進のために避けて通れません。
今、教育関係者と保護者、地域(保健行政、思春期外来等医療関係者等)が一体となって、そのネットワークの中で連携して性教育指導・啓発活動を展開し推進していくことが求められています。

若者への性感染症や望まない妊娠の予防啓発を担う方々にこのコンテンツを有効に活用していただき、今後も性感染症対策の拡充により一層のご尽力をいただきますようお願い申し上げます。

性感染症とは

性感染症とは、「性的接触によって感染する病気」 と定義されます。 普通の性器の接触による性交だけではなくオーラルセックスやアナルセックスなど性的な接触で感染するすべてが含まれます。したがって特殊な状況での感染もありますが、通常の人としての営みの中で誰もが感染する病気であり、誰にでも生じ得る健康問題であるといえます。

性感染症は無症状であることも多く、自覚しないあるいは症状が軽く気が付かないということ、あるいは自覚症状があっても医療機関を受診しにくいことがあるなど、正しい治療に結びつかなかったり、感染がいつの間にか他の人へ広がってしまうという大きな問題点があります。
また生殖年齢にある女性が罹患した場合には、おなかの赤ちゃんや出生した新生児への感染など、母子感染として次世代にも影響が及ぶことがあるということも性感染症の重大な注意点です。

性感染症は、正しい知識と注意深さによる予防、そしてもし罹患した場合には早期の発見と早期治療が重要です。最近、性感染症(STD: Sexually Transmitted Disease)という「病気」だけではなく、症状が出ていない「感染状態」も含め広く考えるために、性感染(STI: Sexually Transmitted Infection)という語が使われることも多くあります。

性感染症の種類

感染症法の中で規定されている性感染症

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)の中では、性感染症として、以下のように国内の発生動向が把握されています。

4類感染症
すべての医師に届け出の義務がある
  • A型肝炎
5類感染症・全数把握疾患
すべての医師に届け出の義務がある
  • 急性ウイルス性肝炎 (B型・C型)
  • アメーバ症
  • 後天性免疫不全症候群
    (エイズ: エイズとして発病していないHIV感染症を含む)
  • 梅毒
5類感染症・定点把握疾患
性感染症定点医療機関(※)からの報告
(※) 性感染症定点医療機関: 産婦人科、泌尿器科、
皮膚科、性病科など967か所の医療機関からなる
  • 淋菌感染症
  • 性器クラミジア感染症
  • 性器ヘルペス感染症
  • 尖圭コンジローマ

【参考リンク】 国立感染症研究所ホームページ  感染症発生動向調査週報 (IDWR)

性感染症に関する特定感染症予防指針で示されている性感染症

  • 性器クラミジア感染症
  • 性器ヘルペスウイルス感染症
  • 尖圭コンジローマ
  • 梅毒
  • 淋菌感染症

前述の感染症法の規定に基づいて大臣告示として発せられた「性感染症に関する特定感染症予防指針」は、平成30年1月18日に一部改正が行われています。
性感染症は、若年層における発生の割合が高いことや梅毒報告数の増加が指摘されており、こうした状況を踏まえ、重点的に取り組む新たな対策を中心に、社会全体で総合的な性感染症対策を実施していく必要があることが示されています。
また、性的接触を介して感染することがある感染症は、ほかにもHIV感染症・エイズ、B型肝炎を含め多数あり、本指針に基づく予防対策は、これらの感染症の抑制にも資するとされています。

なお、HIV感染症・エイズについては、「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」が別に定められています。

【参考リンク】 厚生労働省ホームページ  性感染症 | 厚生労働省

日本性感染症学会が 「性感染症 診断・治療ガイドライン」 であげている性感染症

  • 梅毒
  • 淋菌感染症
  • 性器クラミジア感染症
  • 性器ヘルペス
  • 尖圭コンジローマ
  • 腟トリコモナス症
  • 細菌性腟症(性感染症関連疾患として)
  • ケジラミ症
  • 性器カンジダ症
  • マイコプラズマ感染症
  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • C型肝炎

ヒトパピローマウイルス(HPV)は性的接触を主な感染経路として、子宮頸がん・尖圭コンジローマ等の腫瘍性疾患の原因となるが、感染症法・日本性感染症学会ガイドラインでは性感染症として明示されていない。

日本性感染症学会では、「性感染症 診断・治療ガイドライン」を発行していますが、2020年度版には上記13種類の病気をあげ、それぞれの疾患の解説、診断の流れ、治療法などについて、学会として推奨する標準的な方法を示しています。

【参考リンク】  日本性感染症学会ホームページ  日本性感染症学会 | ガイドライン委員会